法制審議会民法(債権関係)部会は平成21年11月の第1回以来、債権法改正の検討・審議を行い、25.3.11の第71回同部会で債権法改正の[中間試案]-全206ページ-を公表しました。
この焦点が今迄民法にない約款規定の新設で、特に企業側に影響があるのが「不当条項規制」です。昨年退職時まで属したシステム業界の現実と合わせ次表に整理しましたのでご参照下さい。
(1) 約款の定義
25.3.11法制審:中間試案 |
25.2.20経済同友会-意見 |
システム業界の現実 |
多数の相手方との契約の締結を予定してあらかじめ準備される契約条項 |
・約款規定は必要ない ・約款は対等な私人間契約と異なる性質を持っ |
・約款はB-to-B形態の個別の開発契約にも使用され事例がある ・世界的企業も個別の契約で使用する |
(2) 約款の不当条項規制(消費者契約法では既に規定が設けられています)
25.3.11法制審:中間試案 |
25.2.20経済同友会-意見 |
システム業界の現実 |
相手方の権利を制限・義務を加重し、その内容・契約締結時の状況等を考慮し相手方に過大な不利益を与える場合:無効 |
・市場で非合理的約款は淘 汰される ・業法規制があり、約款の合理性は担保される ・問題の多数発生がない |
・業務技術・ソフトでベンダーが ユーザより優位のケースがある ・従って、不当と分かる約款でも受入れざるを得ない ・業法規制は全産業に及ばない |
(3) 主な判例
H15.2.28最高裁判決-ホテル宿泊約款:特則 |
H17.12.16最高裁判決-建物賃貸借:通常損耗特約 |
特則内容:フロントに預けず貴重品が滅失・毀損した場合、損害賠償は15万円を限度とする 判決:本件特則は、ホテル側に故意・重過失がある場合には適用されない |
特約内容:賃借人は通常損耗の原状回復義務 を負う 判決:賃借人に同義務を負わせるには、通常損耗の範囲が契約書に明記or合意内容が明確であることが必要である |
約款は不特定多数を相手に共通条件でサービス提供する電気・ガス・鉄道などの公共事業や、銀行・保険などでは必要不可欠な契約ツールでこれら事業には業法に基づく免許制度と業務規制があります。一方上記システム開発のように免許も業務規制もない業界でもユーザ企業とのオーダーメードのシステム開発契約に約款が使われる事例があります。
システム開発契約で一部ベンダの提示約款は「準委任契約でベンダに完成義務はない」と、「損害賠償額の上限はベンダが受取る委託料金額」が2本柱で、一方的に条件提示するのが実情です。このように約款使用の本来的前提(①不特定多数と共通条件で取引 ②業法に基づく業務規制の存在)や経済同友会-意見が共に想定外の使い方です。
現行民法は1804年のフランス民法(コード・シビル=ナポレオン法典)などをモデルに、明治29年(1896年)制定され同31年(1898年)施行されました。上記法制審議会は2015年通常国会への改正法案提出を目指しています。
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原 能子 (水曜日, 03 4月 2013 19:20)
今回は、なかなか難しい話ですね。。。